スーツを着た悪魔【完結】
両手で自分を抱きしめる。
深青に触れられるのは好きだ。彼のすみれの匂いに包まれると、とても幸せな気分になる。
だけど私たちは子供じゃない。いつまでもただ抱き合うだけじゃ満足できない。いつかは……そういうことに……。
朝倉さんと初めて食事をした夜のことを思い出す。
何を着てもさまになる、スーパーモデル級のプロポーションの深青。
彼が服を脱いだらさぞかしきれいだろう。
それにひきかえ私は……。
思わず気落ちするまゆ。
自分を抱きしめる指に自然と力がこもる。
そこでテーブルの上で充電していた携帯が震え着信を告げた。
まゆははっとして立ち上がり携帯に手を伸ばす。
「――はい」
『まゆ?』
着信は東京にいるはずの悠馬だった。