スーツを着た悪魔【完結】
『急だけど、明日か……明後日、会えるかな。食事でもしながら話したいことがあるんだ』
携帯の向こうの悠馬はずいぶん機嫌がいいようだ。声が弾んでいる。
にしても、話したいことってなんだろう?
不思議に思いながらも、まゆはおそるおそる口にした。
「あの……ごめん悠ちゃん……私いま、出張で京都にいるの。だから明日は無理、だと思う……」
『出張って?』
「社長のお供で……京都に来てるの」
『へえ……そうなんだ。まゆ、出張があるなんて一言も言ってなかったよね』
「――」
思わず息を飲んでいた。
怪訝そうな悠馬の声に、胃のあたりがズキリと差し込むように痛くなる。
「ゆ、悠ちゃん、わざと言わなかったわけじゃないの。一泊だし……言うほどのことじゃないと思ってっ……」