スーツを着た悪魔【完結】

子供のころ唯一まゆに優しかった悠馬。

会えるのは年に数回ほど。結婚してから音沙汰がなかったとはいえ、彼は変わらずまゆにとって特別な存在だ。


そんな彼が自分を怒っていると思うと、まゆの心臓はきゅうっと痛くなり、涙がこぼれそうになる。



『――』

「悠ちゃん……」



無反応の悠馬が怖かった。


どうしよう……


強い混乱で、まゆは酷く動揺していた。


そういえば昔にも、こういうことがあった。

中学生の時、まゆが体育祭の練習で遅くなって、クラスメイトの男子に送ってもらった時だ。


遅くなったのを心配した悠ちゃんが私を迎えに来てくれたのに気付かず、行き違いになって――

あの時は、どうなったんだっけ。

すごく怖かった感覚しか、思い出せない――……



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