スーツを着た悪魔【完結】
携帯を持つ手がひんやりと冷たくなる。
「悠ちゃん、ごめんなさい、わた、し……」
震えながら、それでも悠馬の気持ちを和らげようと必死に言葉を絞り出したところで
『――いや。僕こそごめん』
突然悠馬も、まゆへの態度を変えた。
突然の変化に、ピンと張りつめていた緊張の糸が緩む。
「え……?」
『ごめんね、なんだか急にまゆが大人になったような気がして、大人げないことを言ってしまったみたいだ。まゆだって仕事を頑張っているだけなのにね。本当にごめん』
「悠ちゃん……」
携帯の向こうの悠馬からは不穏な空気は感じない。
いや、怒っていたと感じたのは自分の勘違いだったのかもしれない……。