スーツを着た悪魔【完結】
ホッとして息を漏らしたまゆは、カチコチに固まっていた体を少しだけ緩めて、言葉を続けた。
「悠ちゃん、お土産買っていくね」
『いいんだよ、そんなこと気にしなくても。怒ったりなんかしてないから』
「ううん、そういうんじゃないの。私が買いたいの!」
強い口調のまゆに、携帯の向こうの悠馬がくすり、と笑う。
『どうして?』
「だって……悠ちゃんも、私にいつもお土産買ってきてくれたでしょう?」
『ああ……そうだね。本とか、ちょっとしたものだったけど』
「嬉しかったんだよ。本当に……」
悠ちゃんにそんなつもりはなくても――
本当に嬉しかったんだよ。
まゆはしみじみとつぶやきながら、自分の小さなお城……部屋の中に置いてある宝箱の中身を思い出していた。