スーツを着た悪魔【完結】
それは宝箱と言っても、手ごろなサイズの段ボール素材の箱に、きれいな千代紙や包装紙を張り付けただけの子供じみたものだったが……
中には英語で書いている絵本だったり、小さなスノードームだったり、仕事で世界中を飛び回っていた、外国の切手が貼られたポストカードだったりが、おさめられている。まゆの宝物だ。
幼いころから、悠馬からのプレゼントはいつだってまゆをひどく喜ばせ、辛い日々をほんの一刻でも忘れさせてくれた。
「お返しにはならないけど……お土産買っていくから」
『嬉しいよ、ありがとう』
「じゃあ、帰ったら電話するね。帰るのは夜だから、明後日なら会えると思う」
『わかった。レストランの予約をしておくよ』
「おやすみなさい、悠ちゃん」
『おやすみ、まゆ』
まゆはホッとしたように携帯を切り、そのままベッドにあおむけになって目を閉じる。