スーツを着た悪魔【完結】
小さな唇がかすかに動くのを見ると、なんだかそれが妙においしそうに見えて
「これ、口止め料」
何も考えず、思わずキスをしてしまっていた。
お持ち帰りできそうにないウサギに、キス。
深青にしては、珍しい行為だったのかもしれない。
そんな自分にかすかに違和感を覚えつつも、自分の肩より下にある彼女の顔を見下ろす。
深青の予定では、ここで彼女は頬を染めるはずだったのだが――
彼女は目を真ん丸に見開きひどく険しい顔をした。
可愛らしい黒い瞳のが三角に吊り上り、眉がぎゅっと寄せられる。
と言っても、まったく怖くもなんともないのだけれど、思った反応と違ったことは、純粋に深青を驚かせた。
「あれ、もしかして怒ってる?」
「――#$'&%☆!?」
「え? 聞こえないんだけど。なに?」