スーツを着た悪魔【完結】
「そうなの?」
「そうだろフツー」
「――」
絶句するまゆだったが、自分を見つめる深青は嘘をついているようには見えない。
それに自分が遅れている自覚もないこともない。
そうなのか……『普通』なんだ。
「お前さ……もしかしてこういうこともしたことねえの?」
「悪い? わ、私は深青と違うんだから」
まゆはプイッと顔を逸らし、新幹線の窓のほうに目を向ける。
「俺と違うってどういう意味だよ」
「手が早い」
「はあ?」
「だって……私に、あれ、その、いきなり、口止めしたじゃない……」
ごにょごにょとつぶやくまゆの言うことが一瞬理解できなかった深青だが『口止め』でピンと来た。