スーツを着た悪魔【完結】
「三年前……深青、高天原大学のテニスサークルにOBとして顔出してたでしょう?」
「ん……ああ。付属の幼稚園に行ってたからな……帰国してたときはたまに」
「私、別の短大だけど、そのテニスサークルに所属していたの」
「――」
「で、打ち上げの飲み会で」
「ちょっと、待てまゆ」
深青はまゆの言葉をさえぎって、こめかみを片手で押さえる。
「――三年前、同じことをした?」
「ええ」
「俺が、まゆに?」
「そうよ」
妙に自信満々な様子で、まゆはしっかりとうなずき、そして深青をジッと見据える。
「深青は私に口止め料だってキスしたの。いつもあんなことしてるの?」
「してない」
したこともあるが、すぐに否定した。
(こういう場合、何が何でも否定しなければいけないということは、頼景に教え込まれている)