スーツを着た悪魔【完結】
「まゆ」
なんとなく、まゆの甲に重ねていた手を持ち上げ、そっと指の背でまゆの頬を撫でる。
子供のようにすべすべで、柔らかい肌だ。
頬にかかるまっすぐな髪をくしげずりながら、耳にかける深青。
まゆはしばらくそうやって触れられるのを黙って受け入れていたが、それから何かを言いたそうに唇を開け、眉を八の字にして唇を尖らせた。
「深青と遊園地でデートするまで、デートなんてしたことなかった」
「ああ……」
「デートどころか、手をつなぐのも、き、キスも……」
そしてまゆは、今にも泣きそうな顔で、恐ろしく小さな声でささやいた。
「私、三年前のあれがファーストキスだったのよ」
その言葉に、深青の胸がズキリと痛む。
過去の自分が戯れでまゆにしでかしたことの影響が、あまりにも大きかったことに今更気づいたのだ。