スーツを着た悪魔【完結】
思わずぎゅっとこぶしを握る。
やっぱりやめてもらう……?
どうしよう。
泣きそうになりながら深青を見つめると、まゆの視線に気づき目線を持ち上げた彼はクスリと笑って
「なに、見てんだよ」
と唇の端を持ち上げる。
「え、あ、ご、ごめんなさい……」
「まあ、いいけど。そう余裕ぶっていられるのもあと少しだからな?」
「え……あっ……」
びくん、とまゆの肩が揺れた。
特におかしなことをされたわけじゃない。
深青はその指先で、まゆの髪をかきわけ、耳に触れただけだ。
そういえば、ピアスが開いてるとか開いていないとかの時も、こうされたっけ……。
声が漏れたことが恥ずかしくて、すぐにうつむくまゆだったが、彼の指先は、髪をすきながら、耳の形を確かめるように縁をなぞり、そして首筋をなぞり、鎖骨の上へと向かう。