スーツを着た悪魔【完結】
すっぽりと深青の大きな手のひらに包まれる胸。
パジャマ越しではあるが、やわやわともまれると、その瞬間から、淡いしびれが胸から全身へと広がっていく。
決して激しくはない、むしろ優しいくらいなのだが、次第にまゆの息が荒くなる。
「――いやか?」
深青がまゆのこめかみに口づけを落としながら問いかけると、
「いや、じゃない……けど、」
「けど?」
「へんに、なりそ……う……」
まゆはぼうっと熱にうなされたようになりながら、答えていた。
深青から放たれるすみれの香りと自分の息遣いが混じる密度の濃い空気。まるでウォーターベッドで寝ているかのように、たゆたう意識。
パジャマの上から胸に触れられているだけ。
なのに、恐ろしく気持ちがいい。
自分が自分でなくなりそうで……でもそれは怖いと言うよりも、不思議な感覚だった。