スーツを着た悪魔【完結】
「はいっ……」
『あ、まゆ!? ちょっと、頼んでおいたあれ、買えたの!?』
キンキンと響く声に、耳が痛くなる。
あまりの声の大きさに一瞬携帯を耳から離し、受話ボリュームを下げた。
「あ、ごめんね、ちゃんと買ってるから! 昨日並んで、ちゃんと、」
『はあー? なら、いいけど! ちゃんと持ってきてよ!』
「わかってるよ、大丈夫、ちゃんと持って行くから――」
まゆは自由になるもう一方の手でバッグの中に手を入れる。
『ったく、とろくさいんだから! あんたみたいなゴクツブシ十年も面倒見てやったんだから、ちゃんと恩返ししなさいよね!』
「――うん……」
あれ?
ない。
ない?