スーツを着た悪魔【完結】

まゆはまゆで、自分も世間一般の恋人たちのようなことが出来たことに興奮していたのだ。
(こんな恥ずかしいことを世間の恋人たちはしているんだと動揺する気持ちはあったが)



「まゆ……」



深青は自分にしがみつくまゆを見下ろしながら、肉食獣のようにごくりと喉を鳴らす。


ああ、可愛い。このまま押し倒したい。

だけどとりあえずこれで我慢だ。我慢、我慢……。

前はシャツのボタンを外すところで逃げられたんだから……。


深青はまゆの頭をよしよしと撫でながら、顔を覗き込んだ。



「シャワー浴びるか? 体、洗ってやろうか」

「い、いいっ……一人で……」

「遠慮するなよ」

「してないですっ……」



そう言って、ふらふらしながら立ち上がったまゆだったが――

突如、静けさを切り裂く携帯の呼び出し音に、まゆと深青は驚いたように体を揺らした。



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