スーツを着た悪魔【完結】
嘘がつけないまゆは、一瞬口ごもってしまったが、さすがに男の人と一緒にいるとは言えない。
悠馬がいい顔をしないのは想像に難くない。
考えただけで、胃が痛くなりそうだった。
「も、もちろんだよ、もう、遅いし……寝てたよ。えっと……ところで悠ちゃんは、お仕事終わったところなの?」
悠馬の素の反応を知るのが怖くて、まゆは半ば一方的に悠馬に問いかける。
証券会社が勤め先ともなれば、やはり帰宅は深夜になるんだろう。
耳を澄ませると、どこかを歩いているような雰囲気だ。
悠馬のものらしいコツコツと響く足音と、車のエンジン音や雑踏が聴こえる。
『うん』
「そっか……毎日遅いんだね、体は大丈夫?」
『――明日は』
「え?」
『連絡ないから変更はないと思ってたけど、いいのかな』