スーツを着た悪魔【完結】
「なに?」
『勘違いしちゃいけないよ』
「え……?」
突然投げつけられた悠馬の言葉に、言葉を失うまゆ。
勘違いって……。
『意地悪で言っているんじゃないんだ。まゆがそのことを忘れて傷つかなくて済むように、言ってあげてるんだからね。じゃあ、明日楽しみにしてるよ』
そして悠馬は、なんとも朗らかに言い放ち、一方的に通話を終わらせた。
「――まゆ?」
それまで黙っていた深青が、携帯を握りしめたまま座り込んでいるまゆに呼びかける。
「あ……うん。悠ちゃんだった」
「だけど様子が変だぞ、お前……」
「そんなことないよ。明日食事をする約束をしただけ」
まゆはにっこりと笑って携帯をテーブルの上に置くと、深青が何か言いたそうなのを知りつつも振り切り、バスルームへと向かう。