スーツを着た悪魔【完結】
「シャワー浴びるね。深青はもう寝てて」
変じゃないよ。
おかしなことじゃない。
悠ちゃんは私のことをちゃんとわかってくれてるんだもん。
今まで何度も勘違いしかけて、傷ついたこと――
知っているから、心配して言ってくれてるんだ。
だけど今度は大丈夫。
深青ならきっと……私……。
そう、何度も言い聞かせるのに
悠馬の声が頭の中で響いている。
『勘違いしてはいけないよ』
途端に、悠馬とは別の声が、頭の中で叫び始める。
その声はとても大きいのにうまく聞き取れない。
大人たちの叫び声と悲鳴。
咄嗟にコックをひねり、熱いお湯を浴びる。
肩のあたりを打つお湯のひりつく熱さに、声が遠のく。
思い出したくないことは思い出さなくていい。
大丈夫、大丈夫。何も怖くない。
今の私には深青がいてくれるから……。