スーツを着た悪魔【完結】
『いい、まゆ? 絶対に今日中に持ってきなさい! ほんとトロイんだから! あんたみたいなのと血がつながってると思うとゾッとするわ!』
朝から不機嫌丸出しで電話をかけてきたまゆのイトコは、いつもより長めにまゆを罵ると、一方的に通話を切った。
おそろしい電話が終わったことにホッとしつつも、大変な問題が起こってしまったことに、まゆは激しく動揺していた。
「――どうしよう」
震える手でバッグをひっくり返し、中身を全部さらったけれど――
イトコに頼まれたものが、鞄の中にない。
呆然と散らばったバッグの中身を凝視しても、さらに小さなポケットまでひっくり返しても、ないものはない。
「まだ、買えるかな……」
イトコに頼まれていたのは、若い女の子に大人気の、アクセサリーブランドのピアスだった。