スーツを着た悪魔【完結】
ヤマアラシのジレンマ
「あれ、深青、起きてたの?」
ずいぶん長い間シャワーを浴びていたまゆだったが、布団の上には深青が起きて待っていた。
彼の隣に腰を下ろすと、そのまま上半身を抱き寄せられる。
「深青?」
「明日、その、悠ちゃんとのメシってさ……」
「うん」
「俺も一緒に行っちゃダメか?」
「え?」
「ほら、あの、挨拶っていうか。まゆの親戚なわけだろ? 真面目にお付き合いしてますって言ったほうがよくないか」
「……」
驚いた。深青がそこまで考えていてくれていたなんて。
「まゆ?」
顔を覗き込まれて、ハッと意識を取り戻したまゆは、プルプルと首を横に振って深青を見つめ返す。
「気持ちはすごく嬉しいけど、明日は一人で悠ちゃんと会おうと思う」
「なんで」
「深青がいてくれたら心強いけど、そうしたら私、深青に甘えちゃって……自分でなんにも言えないような気がするから」