スーツを着た悪魔【完結】
そのまままゆは、深青の腕に抱かれて目を閉じる。
疲れていたのか、やがて穏やかな寝息を立て始めたまゆを見ながら、深青は軽くため息をついた。
まゆは従兄の話をするとき、暗い顔になる。
生き生きと輝く黒い瞳は紗がかかったようにかすみ、薔薇色の頬は色を失い紙のように白くなる。
さっきの電話のときだって、まさに花がしおれていく様を見せつけられている気分になった。
なぜ本人には自覚がないのだろう。
少なくとも深青は、唯一優しくしてくれる、心配してくれるという家族の話を聞かされている気分にはなれなかった。
「お前の大丈夫は、あんまりあてにならないって、前にも思ったような気がするけどどうなんだろうな……」
腕の中のまゆの髪をくしけずりながら、深青は夜通しそのことを考えていた。