スーツを着た悪魔【完結】
限定販売とかで、朝4時から並び整理券を貰い、お昼休みを返上して買いに行った代物だ。
もちろん代金はまゆ持ちで、イトコは一円もくれない。
そんなふうに毎月たかられているから、いつまでたってもまゆは贅沢らしい贅沢は出来なかった。
けれど――
それも仕方ないと思っていた。
まゆは幼いころ両親を亡くし、それから伯父の家に引き取られ高校まで出してもらった。
短大は自力(奨学金)だけれど、それまで10年、確かに育ててもらった恩がある。
美人だけれど、我がままなイトコの言うことくらい聞かなくちゃ……。
じわっと浮かんだ涙をぬぐい、携帯を握りしめる。
限定販売だけど、もしかしたらキャンセルとか出てるかもしれないし……。
とりあえず電話してみよう。
――――……
「そう、ですか……完売ですか……はい、ありがとうございました」