スーツを着た悪魔【完結】

都内にあるショップに片っ端から電話をかけたけれど、残念ながらどこも完売という返事しか返ってこない。



「いまさらない、なんて言ったら、怒るだろうなぁ……メミちゃん……」



ため息をつきつつ、膝を抱える。


というか、どこに行ったんだろう……

間違いなく鞄の中に仕舞ったのに。



「――あ!」



そうだ。

私、あそこでバッグの中身をぶちまけたんだ!


豪徳寺深青のことを考えないように、考えないように、と思っていたら、大事なことまで忘れてしまっていた。

あのとき、きっと落としたに違いない。そうとしか考えられない。

落し物になかったか、聞いてみればいいんだ!


って、あのカラオケ屋さん、なんてとこだっけ?


ミカちゃんに聞いてみれば連絡先もわかろうだろうか。


そわそわしながら立ち上がったその瞬間、また電話が着信を知らせる。



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