スーツを着た悪魔【完結】
そういえば昼間はモヤモヤしたままで、深青にブルーヘブンホテルに行くこと言ってなかった。
出かける前にメールしておかなくちゃ……。
ゴールドの華奢なネックレスを鏡を見ながらつけていると、携帯が鳴る。
悠馬かと取った着信は、深青からのものだった。
『――まゆ? 今、どこ』
「え……い、家だけど」
一瞬耳を疑うくらい、深青の声は機嫌が悪かった。
思わず小さくなるまゆ。
『なんで、すぐに連絡してこないんだよ』
「なんでって……今、しようと思ってて……」
思わず言い訳めいた言葉を口にしていた。
不機嫌な男の声というのは、本人が思う以上に女性を怯えさせることがあるのだが、まゆのことを本気で心配していた深青はそこまで頭が回らなかった。
そう、深青は恐ろしく不安だったのだ。