スーツを着た悪魔【完結】
ノックされたドアを開けると、やはり悠馬だった。
「悠ちゃん」
まゆは少し緊張しながらドアを大きく開けて、彼を招き入れる。
「電話したんだけど、話し中だったから」
「ごめんね、ちょっと話していたの」
「そう。もういいの?」
「うん……」
夏用の麻のジャケットをさわやかに着こなした悠馬は、着飾ったまゆを見て満足げに目を細める。
「きれいだ」
「えっ……」
「きれいだ。まゆも大人の女性になったんだなって、感慨深いよ」
「そんなこと、ないから」
真正面から告げられる悠馬の言葉に、まゆは苦笑して首を振る。
「そんなことあるんだけど……」
悠馬は部屋の中をちらりと見回し、首を傾げる。