スーツを着た悪魔【完結】
「携帯、鳴ってるみたいだけど?」
「ううん……いいの」
バッグに押し込んだ携帯が鳴っていることはまゆも気づいていたが、今出ればまた深青にイヤなことを言いそうでそんな気になれなかった。
どっちにしても、食事が終わったら連絡すると約束したのだから。
留守番電話に切り替わったのを見届けてマナーモードにする。
「じゃあ行こうか。下に車停めてるから」
「うん」
――――……
久しぶりに来たブルーヘブンホテルは、相変わらず老舗のホテルらしい佇まいを残した美しいホテルだった。
悠馬は慣れた様子でまゆをレストランまでエスコートする。
「じゃあ、乾杯」
「乾杯」