スーツを着た悪魔【完結】
悠馬が選んだ赤ワインは、ずしりと重いワインで、どちらかというとフルーティーな白ワインのほうが好きなまゆは、食事を楽しみながらゆっくりとグラスに口をつける。
運ばれてくるコース料理はどれもおいしく、お互いの仕事の話や最近読んだ本の話をしたり――メインのスズキを食べるころには、まゆの緊張もだいぶほぐれていた。
「あ、悠ちゃん、お土産渡しておくね」
デザートが来る前に、まゆはバッグから小さな紙の袋を取り出し悠馬に差し出す。
「ああ、京都の?」
「うん」
「――これって……お守り?」
「そう。健康祈願のお守り。悠ちゃんお仕事忙しそうだから」
「そう。ふふっ……」
悠馬はなんだかおかしそうに唇をほころばせる。
まさか笑われると思っていなかったまゆは、パチパチと瞳をしばたかせていたが
「悠ちゃん……こういうの嫌いだった?」
心配になり問いかける。
彼はある意味超現実主義者だ。
お守りなんて馬鹿らしいのかもしれない。