スーツを着た悪魔【完結】
まゆは自分を見つめる悠馬の、静かで落ち着いた瞳を見返す。
「悠ちゃん、私ね」
「部屋はもう決めてある」
「ゆ……」
「僕は仕事が不規則だから、帰りも遅い。だからセキュリティを第一に、いい部屋を探したつもりだ。もちろん周囲の環境もいいし、暮らしやすいと思うよ」
「――」
穏やかにニコニコ笑っているけれど、悠ちゃんはわざと私にしゃべらせないようにしてる……
まゆは膝の上でぎゅっとこぶしを握り、まっすぐに悠馬を見据えた。
「悠ちゃん、話を聞いて」
凛と響く、強い意志を持った声だった。
まゆの言葉を聞かないわけにはいかないと、思ったのかもしれない。
そこでようやく、まだ何かを言いかけていた悠馬は口を止めた。
「話があるって言ったよね。私、好きな人がいるの」
「――」
「だから悠ちゃんが好意で言ってくれてるのはわかるけど、一緒には住めないの……」