スーツを着た悪魔【完結】
無言の悠馬に気おくれを感じながらも、この空間は二人きりじゃない、眺めの良いレストランの一角だということがまゆを後押しした。
「そう……」
悠馬はクスリと笑い、その切れ長の目を細める。
彼の冷めた視線にさらされて、まゆの心臓が鼓動を早める。
「か、彼も、私のこと好きって言ってくれて……信じられそうなの、こんなの初めてなの、だから私、彼と一緒に……生きて、いきたいのっ……」
聞かれたわけでもないのに、言い訳のようにまゆは言葉を続けていた。
「まゆ……少し落ち着きなさい」
そこまで無言を貫いていた悠馬は、そこでふっと表情を和らげ、わがままを言う娘をたしなめるかのような声色でまゆの名前を呼んだ。
「おっ……落ち着いてるよ、ずっと言おうって思ってたの、だけど言えなくて……悠ちゃんが心配すると思ったら、」
「そうだよ。心配するよ。だって、そんなこと許されないだろう?」