スーツを着た悪魔【完結】
ドキン――
まゆの華奢な体が、可哀想なくらい跳ねる。
彼女のおびえた様子を悠馬はうっとりした様子で眺め、言葉を続けた。
「他人に迷惑をかけようなんて、幸せにしてもらおうなんて思ってるの」
「っ……で、でも、深青は、私の過去を、そんなの、気にしないって、知っても、知らなくても、好きになってたって!」
「じゃあ、その男はまゆのすべてを知ってる?」
全てを知っているのか――
報告書の中身をすべて見たわけではない。
深青が私の何を知っているのか、そう問われれば返す言葉がない。
悠馬は軽く上半身をテーブルの向こうのまゆに近づけて、ささやく。
「――まゆ、ひどい顔になってるよ」
「え……」
一瞬何を言われたかわからなかったが、どうやら目の端に涙がほんの少し浮かんでいたようだ。
恥ずかしい……。