スーツを着た悪魔【完結】

「パウダールームでなおしてきなさい。落ち着いて、戻ってきたらまた話の続きをしよう」

「――はい……」



まゆは指先でそっと涙を拭きとった後、バッグを手に立ち上がりフラフラしながらレストランの外のパウダールームへと向かう。


あのまま話していたら取り乱していたかもしれない……。


真っ青になっていた唇にリップを重ね、何度も深呼吸を繰り返す。



――――……



しばらくしてレストランの席に戻ると、悠馬がエスプレッソを飲んでいた。


実に堂に入った優雅な動作だ。

彼は自分のように焦ったりしないのだろうか……。いや、しないのだろう。

だから彼は人生の成功者なのだ。


まゆはそんなイトコを眩しい目で見つめながら、椅子に座る。

テーブルの上にはまゆの分のエスプレッソもあった。



「新しいのに変えてもらったから、飲んで落ち着いて」

「――うん……ごめんなさい」



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