スーツを着た悪魔【完結】
「男だったら気にしないわけないだろう。まゆの本当の傷を知らないから、そいつはそんなのんきなことが言えるんだ」
「っ……」
あれほど心を強く持とうと思ったはずなのに酷い混乱で、心臓が尋常ではないほど早鐘を打つ。
呼吸が乱れ始め、目の前がちかちかし始めた。
「男はね、女を落とす直前が一番燃えるんだ。どんな嘘だって本気でつけるし、きれいごとだって言える……そうだ。覚えてるかなぁ……まゆが中学生の時、クラスメイトの男の子に乱暴されそうになったこと」
悠馬は頬杖をつき、どこか懐かしそうに微笑みを浮かべながら思い出話を始めた。
「運動会の練習の帰りだったっけね。帰りが遅いから迎えに行った僕とすれ違いになって……まゆ、泣きながら帰ってきたことがあっただろう」
ぶっきらぼうだけど優しい男子だと思っていたクラスメイト――