スーツを着た悪魔【完結】
「や……めて……ゆ、ちゃん、くるし……」
まゆは真っ青になったまま、息をしゃくりあげ始めた。
ひゅうひゅうと空気が漏れる。
彼女の、蚊の泣くような声は、悠馬に届いているはずなのに、悠馬はまったく意に介していないようだ。
「まゆ」
悠馬はひどく優しい声で、テーブルの上のまゆの手をつかみ、引き寄せる。
「まゆの傷を知っている男は僕だけ。僕だけがまゆの側にいてもいい、本当の愛情を持った男なんだよ」
蒼白を通り越したまゆは、妙な感情の高揚感と一緒に、酷い頭痛を覚え、気をしっかり持とうとテーブルの上に手を突いたが、椅子に座っている体が重く、口が動かない。
「ゆう、ちゃ……」