スーツを着た悪魔【完結】

悠馬はそんなまゆを穏やかに冷静に見つめながら、給仕を呼び支払いを頼む。

すぐにやってきた給仕は顔面蒼白で震えているまゆを発見し、ほんの少しだけ表情を変えた。



「お連れ様、いかがなさいましたか? もしよろしければ医者を呼びますが……」

「大丈夫ですよ。妻はアルコールに酔っただけです。部屋を取っていますから休ませます」

「さようでございますか……」

「お気遣いありがとう」



カードのサインをしながら、実に紳士的ににっこりと微笑み、俯いたまゆを抱きかかえるようにして立ち上がらせると、そのままレストランを出て行く。


どこに行くの……?


部屋?


どうして私をそこに連れて行くの。

どうしてこんなに気分が悪いの?




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