スーツを着た悪魔【完結】

『本当、お前相当な奴だな』



携帯の向こうの深青は、低い声でささやく。


相当なヤツ――って。



「あっ……あなたにそんなこと言われる筋合いありませんけど!?」



普段はかなり温厚で、我慢強いまゆだが、なぜかこの男には本気で切れてしまう。理由はわからない。けれど失礼な奴だから失礼な態度を取ってもいい、というのとは少し違う、複雑な感情だ。



『――そんな口、俺に聞いていいわけ? このMDのピアス、お前のだろ』



MD(エムディー)
まゆがイトコに頼まれていたアクセサリーブランドの名前だ。



「あなたが持ってたんですか!」

『拾ったんだよ』

「返してください」

『はい?』



まゆの強い口調に、厭味ったらしく深青は言葉を返す。



『その態度はない。マジ、ない。親切で電話してやってるのに』

「――すみません……」



< 47 / 569 >

この作品をシェア

pagetop