スーツを着た悪魔【完結】

読んでないと言えばよかった。

いや、言ったところで信じてもらえたかはわからないが、まゆに強い不信感を抱かせてしまったことは事実だ。


まゆが人一倍敏感で、傷つきやすい女だとわかっていたのに、あまりにもうかつだった。


食事が終わったら連絡すると言っていたが、大人しく待っていることなどできそうにない。

まゆの部屋の前で待っていたほうがいいんじゃないだろうか……。




深青は深くため息をつきながら、両手で顔を覆う。


怖い。

まゆが自分の予測の範囲内にいないことが死ぬほど怖い。


彼女を失うことを考えるだけで、不安で胸がかきむしられる。

こんな気持ちは生まれて初めてだった。


何が何でもまゆを失うことはできないと思うと同時に、どうやったら万事がうまくいくのか、着地点を見失ってウロウロするばかりだ。







< 471 / 569 >

この作品をシェア

pagetop