スーツを着た悪魔【完結】
読んでないと言えばよかった。
いや、言ったところで信じてもらえたかはわからないが、まゆに強い不信感を抱かせてしまったことは事実だ。
まゆが人一倍敏感で、傷つきやすい女だとわかっていたのに、あまりにもうかつだった。
食事が終わったら連絡すると言っていたが、大人しく待っていることなどできそうにない。
まゆの部屋の前で待っていたほうがいいんじゃないだろうか……。
深青は深くため息をつきながら、両手で顔を覆う。
怖い。
まゆが自分の予測の範囲内にいないことが死ぬほど怖い。
彼女を失うことを考えるだけで、不安で胸がかきむしられる。
こんな気持ちは生まれて初めてだった。
何が何でもまゆを失うことはできないと思うと同時に、どうやったら万事がうまくいくのか、着地点を見失ってウロウロするばかりだ。