スーツを着た悪魔【完結】
――――……
「はぁ……なんだかピリッとしない一日だったなぁ……」
未散は助手席で深いため息をついて、シートベルトを外した。
「退屈って……俺をわざわざ呼び出しておいて?」
エンジンを切った頼景は、信じられないといった表情で隣に座る未散を見つめた。
彼は、未散に呼び出しを受け、彼女の運転手兼荷物持ちとしてショッピングに付き合わされたのだ。
しかも玄関ロビーで、仕事が終わるまで待っていると言う未散を帰そうとやっきになっていると、上司がやってきて「今日は帰っていい」と言われるという最低な午後だった。
芙蓉堂の大ヒット商品のイメージガールだった未散を、社内で知らないものはいないのだが、頼景は彼女と幼なじみであることは秘密にしていたので、彼女が本社ビルに姿を現し、頼景を呼び出した時点で部内は大騒ぎになったし、今後二人の仲は面白おかしく噂されるに違いないだろう。