スーツを着た悪魔【完結】

「未散、彼女と仲がいいのか?」



エレベーターに乗り込み、頼景が尋ねる。


入れ違いに降りる男性にあからさまに見られても動じない未散は、掛けていた大ぶりのサングラスを外しながら、微笑みを浮かべた。



「まゆちゃんと? メールとか電話とかするくらいだけど、いい子だよね。ちょっと自己評価が低いところは、お姉ちゃんに似てるかも」

「ふうん……」



確かに、未散の姉の美咲は、華やかな妹に比べて引っ込み思案なところがあった。容姿はまったく似てないが、雰囲気はどこか似ているかもしれない。


エレベーターが目的の階に到着するのを待ちながら、未散はさらに言葉を続けた。



「俺様のお兄ちゃんだから、まゆちゃんと気持ちを擦り合わせるのにすごく苦労すると思うんだ。だけど、お兄ちゃんは今までワガママ勝手し放題だったから、苦労すればいいんだよ。そうやって、人の気持ちは自分の思い通りになるもんじゃないって、勉強すればもう少しいい男になれると思うのよね」




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