スーツを着た悪魔【完結】
深青以外の男に触れられる。
全身が激しい拒否反応を起こした。
その強い拒否感が、一瞬呆けたまゆの意識を取り戻させる。
「い、やっ!」
陸にあげられた魚のように身をよじらせるまゆは、ベッドの上から逃れようと体を動かし、そのまま床へと転がり落ちた。
ガツン、と肩にひどい衝撃を受けたが、どうにか立ち上がりドアのほうへと走る。
縛られた手をドアノブに伸ばしたその瞬間、後ろから首をつかまれて、そのままのけぞるように仰向けに床に転がっていた。
途中、部屋の調度品の何かに体をぶつけたのか、脇腹のあたりを激しく打って、意識が一瞬飛んだが、喉を限りに叫んでいた。
「みさお、深青ーーっ!!!!!」
彼がここに来るわけがない。
いるはずがない。
けれど叫ばずにはいられなかった。