スーツを着た悪魔【完結】
ガツン、と鈍い音がして、首にかかっていた手が緩むと同時に、すうっと新鮮な息が喉を通った。
「まゆっ……」
どうやらまゆの攻撃は悠馬の意識を失わせるほどではなかったようだ。
まぶたの上、額を抑えながら、悠馬が激しい怒りの表情を浮かべる。
けれどまゆは諦めず、泣きながら叫んでいた。
いまだかつてこんな大きな声を出したことがないくらい、まゆは全身全霊で叫んでいた。
「みさ、お、みさおーーーっ!!!!!」
その瞬間、目の前のドアが激しく音を立てて開き、黒い人影が飛び込んできて、悠馬にぶつかり、悠馬とその影はもつれ合うようにして床に転がった。
「――てめえ……殺す!」
二つの影はやがて一方が上位に立った。
それはまゆが待ちに待った深青、その人だった。
固く握った拳を振り上げ、組み敷いた悠馬に叩き込む。