スーツを着た悪魔【完結】
それから暴力的な、骨がぶつかる音が部屋中に響く。
暴れていた悠馬が反撃する意思を失っても、それは続いていた。
「っ……」
まゆはひゅうひゅうと鳴る喉から声を絞り出す。
「みさ、お……」
けれどまゆの小さな声では深青を止めることはできなかった。
深青は心底怒り狂っていたのだ。
同時に激しい恐怖に取りつかれ、体中の震えが止まらなかった。
未散から連絡があって、ブルーヘブンホテルに到着するまで、生きた心地がしなかった。
この男を殺すまで理性などいらないと、本気で思っていた。
「お兄ちゃん!」
「深青、やめろ! 殺す気か!」
未散と頼景、そして総支配人と、彼が信頼を寄せるホテルマンが数人がかりで、深青を悠馬から引きはがす。
「救急車を呼べ! 豪徳寺の息がかかった病院があるから、そこに運ぶんだ!」