スーツを着た悪魔【完結】
「まゆちゃん、大丈夫!?」
未散が床に倒れ込んだままのまゆの体を抱き起す。
「お兄ちゃん、しっかりして! まゆちゃんを見て! しゃんとしないとぶっとばすわよ!」
まゆ……
「まゆ!」
未散の言葉にようやく冷静さを取り戻した深青は、ぐったりとしたまゆを未散の腕から抱き寄せる。
美しいブラックドレスはかろうじて体にひっかかっているだけだった。
首筋には血が滲み、歯型までついていた。手首にはストールが巻き付けられている。
「まゆ、もう大丈夫だ」
深青はそのストールを手早く外しながら、まゆの名前を呼んだ。
ホッとして気が緩んだのか、彼女の黒い瞳が自分を見つめながら、みるみるうちに潤んでいく。
「――みさ、お……」
まゆはそれ以上何も言えなかった。