スーツを着た悪魔【完結】
一方深青は、一階に降り血で汚れた手を洗い、それから熱い紅茶を淹れていた。
彼女をどうやって慰めたらいいんだろうか……。
銀色のトレイに乗せて二階に上がり、テーブルの上にそれらを並べていると、バスルームに続くドアがガチャリと音を立てて開いた。
「まゆ、お茶飲むだろ?」
振り返ると、バスローブを羽織っただけのまゆが立っていた。
一瞬、言葉を失う深青だったが、風呂から出てバスローブ一枚なのは当然で、動揺するほどのことでもない。
まゆは無言のまま、じっと深青を見つめる。
その瞳はどこか空虚で……様子がおかしい。
「ま――」
彼女の名前を呼ぼうと口を開いた瞬間
「い、て……」
まゆが消え入るような声でささやいた。
「え?」