スーツを着た悪魔【完結】

「――」



深青は無言でまゆを見つめた後、ゆっくりと、慎重に口を開いた。



「抱かねえ」

「っ……」



ガツンと後頭部を殴られたような衝撃だった。



「な、んで……私が、もう嫌になったの……きらいに、なった?」

「違う!」

「だったらどうして!」



まゆは叫んでいた。


そして深青を突き飛ばし、ガウンを脱ぎ捨てる。


今度は止めることができなかった。

彼の前にさらされた白い肢体を見て、深青は息を飲む。呼吸を忘れた。


彼女の体には、胸の間からへその上にかけて、引きつったような大きな傷があったのだ。



「本当は、私が醜いからイヤなんでしょ! 両親の無理心中で生き残った不吉な子供から、気持ち悪いんでしょ!」

「ま、ゆ……!」




< 501 / 569 >

この作品をシェア

pagetop