スーツを着た悪魔【完結】
無理心中?
両親が死んだというのは彼女の口からきいていた。
初めて聞いた事実だったが、彼女は自分がそれを知っていると思い込んでいるらしい。
「やっぱり私なんか欲しくなんだ、うそつきいっ! ううーっ……」
まゆは、その場に崩れるようにしゃがみ込んで子供のように泣きじゃくる。
その取り乱した様子に、深青はまゆ同様ひどく傷ついていた。
そういえば初めてまゆとそういう風になりかけた時――
シャツにボタンを掛けた瞬間、まゆに逃げられた。
昨日、彼女の部屋で抱き合った時も「脱がさないで」と言われた。
そういうことか……。
心だけじゃない。体にもまゆは傷を抱えていたんだ。
深青は今さらながら納得しつつ、同時にあの男を思い出していた。
まゆの従兄。
あの男は、まゆを否定し続け、心を折り、どうせ自分なんかと、自分の足で立てなくなるまで、傷つけ続けてきたのだろう。