スーツを着た悪魔【完結】

本当は死ぬはずだったのに生き残ったから

大きな傷跡が体に残っているから

幸せになってはダメなのだと呪いをかけた。



そうだ、だから彼女は――

こんなふうにしか自分を扱えない。

自分自身を愛せない。大事に出来ない。
自分の体を差し出して、愛情をはかろうとしている。取り戻そうとしている。



深青はぎゅっと拳を握った後、その手をこわごわ開いて、床に丸まったバスローブを拾い上げ、裸のまゆの体を包む。



「まゆ、違う……お前は、俺の気持ちが変わっていないと言う証拠が欲しくて、自分の体を差し出そうとしているだけだ。抱かれなくちゃって焦ってるだけだ……」

「ううっ……うわぁぁ……!」



図星を突かれたのかわかったのか、さらに、まゆは大きな声をあげて泣き始める。



< 503 / 569 >

この作品をシェア

pagetop