スーツを着た悪魔【完結】
抱いてなんて言ってしまった自分を、まゆは恥じていた。
深青が驚くのも当然で、穴でも掘って埋まりたいくらい身の置き所がなかった。
「別に困ってねえよ。まゆ……抱きたくないわけないだろ。だけど今はその時じゃないってだけだ」
深青はまゆの顎の下に指を入れると、自分のほうに向ける。
そして頬に張り付いた髪をとりのぞき、額にキスをした。
その優しい仕草に、まゆの涙腺はまた緩みそうになったが、自分を見つめる深青を見上げ、唇をかみしめる。
「――深青、私の、両親は……」
「ああ……そうだ、あの報告書だけど、中は見てないから」
「え……」
「調べて悪かったって、頼景に渡されたんだ。だけど見てない」
「そう、だったんだ……」
まゆはこっくりとうなずき(そもそもまゆは自分を疑っても深青を疑うという考えはない)それからゆっくりと口を開く。