スーツを着た悪魔【完結】

大事にされた記憶がないから、自分を大事に出来ない。

愛されたことを覚えていないから、上手に愛せない。


だったら俺が根気よく付き合うだけだ。

まゆが自分を愛せるようになるまで――

愛するだけだ。



「お前が生きててよかった」



深青は唇を震わせながら、まゆにささやき続ける。



「今、ここにお前がここにいてくれてよかった……」



深青の大きな手がまゆの頬をなで、そして背中にまわる。

まゆの存在を確かめるかのように抱きしめる腕に力を込めた。



「深青……」



まゆは呆然としながら、自分を抱きしめる深青の体温を感じていた。



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