スーツを着た悪魔【完結】
悠ちゃんに襲われた時、死にたくないと思った。深青に会いたかった。
そして今、こうやって抱きしめられて、深青にもう一度会えた。
悠ちゃんは言っていた。
私は幸せになってはダメな子だって。
その通りだと思っていた。
だけど、今、私は幸せな気持ちで胸が苦しい。
そう。苦しい。幸せになることが怖い。後ろめたく感じる。
けれど同時に、戸惑いと苦しみで満ちた向こうに、温かい何かが見える。
手を伸ばせば掴めそうな、だけど消えてしまいそうな、小さなともし火。
私はずっとそれが欲しかった……?
そうだ、簡単なことだった。
私は、許されたかった。認めてもらいたかったんだ。
生きてていいよって。幸せになっていいよって。
たったそれだけ。
ただ、それだけで――
「まゆ……」
もしかして、私の首筋を濡らしているのは、彼の涙なの?