スーツを着た悪魔【完結】
「――こちらは?」
深青は空気の変化を読み、いち早く余所行きの顔を作る。
「あ、イトコのメミちゃん。悠ちゃんの妹なの」
「ああ……そう」
ということは、あれか。
まゆを朝4時からMDに並ばせてピアス買わせた性悪女か。
深青は一瞬で不愉快になったが、長年飼いならしている大きな猫を総動員して、誰もが見とれるような鮮やかな笑顔を浮かべた。
「初めまして豪徳寺深青です。この病院は親族が経営していまして、まゆさんと一緒に悠馬さんのお見舞いに来た次第です」
「あ……」
真正面から微笑みかけられたメミは、言葉を失った。
なんてきれいな男なんだろう。
男らしく、なおかつ上品で美しい。
今までありとあらゆるタイプの男と付き合ったことがあると自負していたメミだったが、こんな上等な男は初めて見た。
そして親族がこの大きな病院を親族が経営しているという発言に驚きが隠せない。