スーツを着た悪魔【完結】
まゆが視界に入ったときは頭に血が上ったが、こんな男が一緒だったなんて……。
「えっ!? あ、そう、なんですか、あの、えっと……私、まゆの従兄のメミと申します。びっくりしちゃった、まゆにこんな素敵な友人がいるなんて知らなかったわ」
そう。愚図なまゆにこんな知り合いがいるとは思わなかったが、チャンスだ。
だってまゆより、私のほうがずっときれいだもの。
今までずっとそうだった。まゆよりも私が選ばれてきたのだから。
まゆのものは、私のもの――
そこへまゆが、焦ったように割って入る。
「ね、ねえ、メミちゃん、悠ちゃん、お仕事にはすぐに戻れるくらいには回復してるの?」
「仕事? なに言ってるのよ、辞めて帰国してきたんだからしてるわけないでしょ。それに回復って言ったって、階段から落ちてケガしただけだし……まぁ、お兄ちゃんにしては信じられないウッカリだとは思うけど。離婚したっていうのもさっき知って死ぬほど驚いたけど……」