スーツを着た悪魔【完結】

まゆが視界に入ったときは頭に血が上ったが、こんな男が一緒だったなんて……。



「えっ!? あ、そう、なんですか、あの、えっと……私、まゆの従兄のメミと申します。びっくりしちゃった、まゆにこんな素敵な友人がいるなんて知らなかったわ」



そう。愚図なまゆにこんな知り合いがいるとは思わなかったが、チャンスだ。

だってまゆより、私のほうがずっときれいだもの。

今までずっとそうだった。まゆよりも私が選ばれてきたのだから。

まゆのものは、私のもの――


そこへまゆが、焦ったように割って入る。



「ね、ねえ、メミちゃん、悠ちゃん、お仕事にはすぐに戻れるくらいには回復してるの?」

「仕事? なに言ってるのよ、辞めて帰国してきたんだからしてるわけないでしょ。それに回復って言ったって、階段から落ちてケガしただけだし……まぁ、お兄ちゃんにしては信じられないウッカリだとは思うけど。離婚したっていうのもさっき知って死ぬほど驚いたけど……」



< 531 / 569 >

この作品をシェア

pagetop